生活・心

「ピロルリア」という「仮説の疾患」で心の病を治そうと尽力した研究者のはなし

「ピロルリア」は「病気」ではないの??

ピロルリアとカールファイファー博士について

この記事は ピロルリアはワキガの原因になるの?国内での検査方法は? の追加記事です 

「ピロルリア」は病名じゃないの??

体内でヘモグロビンが合成されるとき、ピロールという成分が過剰につくられてしまうと、体から悪臭が発せられるのだそうです。
その「ピロール」が体外に排出されるときに、体の健康維持に必要なミネラル、亜鉛なども一緒に排出されてしまう。
だから、体内のバランスが崩れる。
これが、ピロルリア(ピロール尿症)なのだそうです。

でも、ピロルリアは、元々、ワキガをはじめとする体臭の治療のためにできた名称ではありませんでした。
しかも、医学的には「病気」と承認さえされていないようです。
ワキガ自体は「腋臭症」という「病気」と認められているのに、ピロルリアは認められていない、だからピロール「尿症」、症状という考え方なんですね。

ではピロルリアとは何?

もしかしたら、体に必要なミネラルなどの栄養後が足りないことが原因のひとつになって、うつ病や統合失調症などの精神の病を発症してしまうのではないか

ってことは、足りないミネラルを上手に補うことができれば、精神病は軽減するのでは?

という仮説から生まれたのが「ピロルリア」、ピロール尿症です。

病気と認定はされていないけれど、体内でつくられる「ピロール」が体外に排出されるときには「かなりの悪臭をともなう」のは解明されているようです。

ならば、自分の身体から「ピロールがたくさん出て入れば」ピロール尿症ということ??
でも、はっきりと「病気」と認定されていない=保険証を使ってサクッと治療対象になる「病気」ではない…
ややこしいです。

自由診療なのか?と知り、一気に敷居が高く感じられてしまいますが、ピロルリアについて調べるうちに、カール博士という一人の学者さんの存在を知り、この人スゴイと思ってしまいました。

「精神疾患に苦しむ人たちの尿からは、ピロールが多く検出される傾向が強い」という点に着目して、研究を続けたピロルリアの提唱者、カールファイファー氏です。

ここでは、カール・ファイファー氏についてまとめてみたいと思います。

カール・ファイファー博士について

カールファイファー博士(1908年3月19日– 1988年11月18日)
アメリカ・イリノイ州ピオリア出身
ニュージャージー州プリンストンで80歳で逝去

統合失調症やアレルギーなどを専門に研究した生化学者、薬理学者。医師でもあります。

ウィスコンシン大学で薬理学の学士号と博士号を取得し、シカゴ大学で医学の学位を取得。
ノーベル賞を2度受賞しています。

研究の大きなテーマは「栄養」「微量金属」そして「生化学の不均衡」。
体内の生化学的な(ミネラルなどの)バランスの崩れが多くの心理的問題の原因であると提唱しました。

ファイファー博士は、大半のうつ病の人は「うつ病の素因を持って生まれた」が「生化学的な治療を行うことで、精神の病気を克服できるかもしれない」と考えました。

それを検証するために、2万人にものぼる統合失調症の患者の「ミネラル代謝」について研究します。
そして、全患者の1/3に、何らかの体内のミネラルバランスに異常(※)があると確信し、症状を「ヒスタペニア、ヒスタデリア、およびピロルリア」という3つのグループに分けて発表しました。
そのひとつが、ピロール尿症(という症例)です。

※非常に高い好塩基球数、非常に高い血中ヒスタミン、微量金属の異常、の3つ

けれど当時の医学界では「精神疾患は遺伝で、ミネラル成分の投与などで治療できるようなものではない」という考え方が一般的で、博士の主張は簡単には受け入れられることはありませんでした。
「検査結果の精度」などを争点に懐疑派と擁護派で賛否両論となり、迷走したまま、ピロール尿症はいまだに正式な病名とは承認されていない状態です。

それでも博士は、自分の説は正しいに違いない!と、プリンストンブレインバイオセンターを設立し、ピロール尿症などを専門とする外来治療を行いました。

さらに、回復した統合失調症患者のための、住宅ともなる治療施設の運営にも携わり、1988年(=昭和63年)心臓病で80歳で逝去するまで、精神の病に苦しむ人たちを救済しようと尽力しました。

※博士についての情報は、一部海外版Wikipedia(CC BY-SA4.0)から引用しました。

ね。すごいでしょ。
博士は、精神病を治療するためにピロール尿症について追及し続けた人なので、わきがや体臭の研究をしていた人ではないのですが、もしも、正式に病名と認めてもらえて、治療が広く広まっていたら、辛さから解放されるたくさんの患者さんがいたのかもしれないのに。

それに、体の中で作られる成分の割合とか、排出される成分の濃さ?みたいなものから、心のバランスを崩すかもよ!が治療の対象になるなら、ワキガの改善、治療にも大きな貢献をしたんじゃないかなあ。って思います。

博士のノーベル賞を受賞した内容も知りたかったのですが、確認できた著作物は「 精神疾患と栄養 うつ、不安、分裂病にうちかつ
のみ。しかも、どこにも売っていなくていまだに手に入りません。
ワキガとは直接関係がないのですが、疾患に苦しむ人を救おうとして頑張った博士の著作、いつか読んで功績を知りたいです。

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